スマホ(携帯)で自律神経系機能を評価
○「脳疲労・ストレススキャン」活用法
ー脳疲労度とストレス度ー
私たちは、自律神経機能と健康との関係を調べましたところ、自律神経系の活動は心身の疲れ、睡眠障害、メンタルヘルス障害などに陥ると低下することがわかってきました(疲労と自律神経機能との関係)。そこで、脳・神経系の活動低下を意味する自律神経活動の低下を客観的な脳疲労度(脳活動の低下)として表すことができるのではないかと考えました。
しかし、多くの健常者の自律神経系の活動の程度を分析しましたところ、個人個人の自律神経活動の値は加齢に伴い有意に低下していることもわかり、年齢の異なる人々の自律神経活動の評価を用いて脳疲労度を算出するためには、年齢による要素を取り除く必要がありました。
そこで、我々はこれまでに収集した大規模な健常者データを用いて,年齢1歳ごとの自律神経活動値の分散から各年齢における自律神経活動偏差値を算出し、どの年代の被験者でも共通して用いることができる自律神経活動指標を考案致しました(特許第6550440号)。私たちは、この指標を活用して脳疲労度(脳疲労度=100-ANA-SS)を算出することに致しました。脳疲労度は50が正常(中央値)であり、60の場合は被験者と同一年齢集団において上位から15.9%の位置にある少し疲労がたまった状態、脳疲労度が70の場合は上位から2.3%の位置のかなり強い脳疲労度状態にあることを示しています。
また、自律神経系には活動の神経である交感神経と癒しの神経である副交感神経がありますが、この交感神経と副交感神経のバランスは心身へのストレス負荷により上昇することがわかっています。そこで、交感神経と副交感神経の比率(交感神経活動/副交感神経活動)をストレス度と呼ぶことにしました。
私たちは、脳疲労度とストレス度を組み合わせて評価することにより、現在の疲労度をより客観的に評価できると考えています(疲労と自律神経機能との関係)。
体調不良の改善に、ストレッチやヨガなどの柔軟性を高める運動や、アロマ治療、音楽療法、半身浴などの取り組みが進められています。しかし、このような介入に伴う自律神経系活動の変化は個人差が大きく、ある人にはストレッチが良くても、別の人には効果がみられないことも知られていまして、一人一人に適した予防や治療を行うオーダーメイド治療が望まれています。
上述のストレッチやヨガなどの介入前後で自律神経機能の客観的な指標である「脳疲労度」と「ストレス度」を用いて自分の健康状態を知ることで、自分に適したオーダーメイドな取り組みを作り上げることが可能となります。これらの指標を活用して、ご自身の健康状態を把握し、健康の維持・増進につなげて下さい。
なお、医療機器などの自律神経機能評価装置では600Hzのサンプリングレートにて心拍間隔の変化をより詳細に評価をしています。今回のスマートフォンのカメラ機能を用いた自律神経機能評価は、簡易的な60Hzアップサンプリング技術を用いて行っていますので測定精度は低く、あくまで健康評価における参考指標としてご利用ください。
今回の計測で異常が続く場合は、600Hzのサンプリングレートにて心拍間隔の変化をより詳細に判定できる医療機器(VM302、もしくはVM500)、または健康器具(VM600およびMF100)などの装置を用いた評価を受けられることをお勧めいたします。
FMCC相談窓口では、自律神経機能評価結果の意義や活用法などにつきまして専門家との連携コーナー ①自律神経相談コーナーにてご相談を受け付けておりますので、ご活用ください(有料:電話相談1,100円/10分(税込))。
医師:倉恒弘彦(くらつね・ひろひこ)
プロフィール
大阪市立大学医学部客員教授として、疲労クリニカルセンターにて診療。1955年生まれ。
大阪大学大学院医学系研究科 招へい教授。
日本疲労学会理事。著書に『危ない慢性疲労』(NHK出版)ほか。
〇参考資料:自律神経機能と脳疲労度との関係について
NHK「美と若さの新常識」で紹介