株式会社FMCC(Fatigue and Mental Health Check Center)

メタボローム解析

 ヒトのすべての細胞は,生存し活動するためにはエネルギーが必要である。通常,食事として取り込まれた糖や脂肪は,細胞のエネルギー工場にあたるミトコンドリアにおいて一度ATP(アデノシン三リン酸)という形に変換されて蓄えられており,必要に応じてATPよりエネルギーが取り出されることにより,細胞が維持され,増殖し働くことができている。したがって,エネルギーの産生に関連した種々の代謝異常はさまざまな疾病に結び付くことが報告されている。

 最近,原因不明の慢性的な疲労病態にもエネルギー代謝の異常が関与している可能性が明らかになった。理化学研究所の片岡らは,慢性的な激しい疲労を訴える慢性疲労症候群(CFS) 患者 47名と健常者 46名を対象にキャピラリ―電気泳動質量分析計を用いて網羅的メタボローム解析を行ったところ,解糖系のピルビン酸,TCA 回路前半のクエン酸やイソクエン酸,尿素回路のオルニチンやシトルリンにおいて,CFS 患者群と健常者群との間に濃度の違いがみられることを見出した1,2)(図 1) 。

 測定された代謝物質を用いてパターン識別手法による解析を行ったところ,CFS 患者群と健常者群を判別するうえでイソクエン酸,ピルビン酸,シトルリンが抽出された。これは,長期的な疲労病態を反映して①解糖系から TCA 回路流入の機能低下(ピルビン酸濃度の上昇とイソクエン酸濃度の低下)と②尿素回路の機能低下(オルニチン濃度の上昇とシトルリン濃度の低下) が特に顕著に起こったためと考えられた1,2)。

 そこで,これらの機能低下の指標として,①ピルビン酸/イソクエン酸,②オルニチン/シトルリンの2つの代謝物質比を,上述の被験者とは異なる新たな,CFS 患者20名と健常者20名において比較したところ,CFS患者群のほうが有意に高いことが確認され,2群を判別するうえで有効な指標であることが判明した。 彼らは,ストレス負荷により誘発した疲労動物モデルでの血液代謝物においても,CFSと類似の変化がみられることを確認しており(図2)3),簡易な検査法として,①ピルビン酸/イソクエン酸,②オルニチン/シトルリンの2つの代謝物質比を用いることで,生活環境ストレスに伴う疲労病態を判定できる可能性を提唱している。

   

 

     

 

文献

1.Yamano E, Sugimoto M, Hirayama A, Kume S, Yamato M, Jin G, et.al.  Index markers of chronic fatigue syndrome with dysfunction of TCA and urea cycles.  Sci Rep. 2016 ;6:34990. doi: 10.1038/srep34990.

2. 大阪市立大学 ホームページ:慢性疲労症候群の客観的診断に有効なバイオマーカーを発見 https://www.osaka-cu.ac.jp/ja/news/2016/161017

3. Kume S, Yamato M, Tamura Y, Jin G, Nakano M, Miyashige Y, et.al. Potential biomarkers of fatigue identified by plasma metabolome analysis in rats. PLoS One. 2015;10(3):e0120106. doi: 10.1371/journal.pone.0120106.

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